名古屋高等裁判所 昭和61年(ネ)692号 判決 1987年1月29日
控訴人
有限会社豊設計事務所
右代表者代表取締役
佐藤一
被控訴人
王子商事株式会社
右代表者代表取締役
鶴田清
主文
本件控訴を却下する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴人は、名古屋地方裁判所岡崎支部が同庁昭和六一年(ワ)第一〇六号家屋明渡等請求事件につき同年一一月一〇日言い渡した控訴人敗訴の判決に対し、本件控訴を提起したものである。
記録によれば、(1)被控訴人は控訴人に対し昭和六一年三月一八日本訴を提起したが、控訴人の唯一名の取締役であつた小瀬古丈一は名古屋地方裁判所岡崎支部において同五八年六月二七日午前一〇時破産宣告を受けて取締役たる地位を喪失し、後任の取締役も選任されていなかつたので、被控訴人の申請に基づき、原審裁判官は、同六一年七月八日、弁護士田代清一を本訴事件の控訴人の特別代理人に選任したこと、(2)控訴人代表者佐藤一は、昭和六一年一〇月六日控訴人の取締役に就任し、同年一〇月七日その旨の登記がされたが、その後も前記特別代理人は解任されることなく、本訴は同特別代理人が追行し、原判決正本も、同年一一月一一日、右特別代理人が送達を受けたこと、(3)控訴人(代表者佐藤一)が当裁判所に控訴状を提出したのは、昭和六一年一一月二七日であること、以上の経過が認められる。
ところで、有限会社を代表する取締役が特別代理人の選任後に就任した場合でも、特別代理人は当然にはその代理権を失わず、裁判所の解任によつてはじめてその資格を失うと解すべきであり、また、特別代理人は、特別の受権なくして上訴を提起し得るものと解される。
そうだとすると、控訴人は、民訴法三六六条により、前記特別代理人に原判決正本が送達された日から二週間内に控訴を提起することを要するところ、前示のとおり控訴状が提出されたのは昭和六一年一一月二七日であるから、本件控訴は、控訴期間経過後に提起された不適法なものであつて、その欠缺は補正することができないものといわなければならない。
よつて、民訴法三八三条により本件控訴を却下することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官宇野榮一郎 裁判官日髙乙彦 裁判官三宅俊一郎)